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第1章 医療保障と保健

社会保障

企画展「岩手の保健福祉 1960~70年代を中心に」展示風景

全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有します。しかし病気や年齢による身体能力の低下や突然の失業など、個人の努力(自助)では対処しきれないリスクもあります。国民が互いに連帯して支えあい(共助)、また国が必要な扶助を行う(公助)ことで、国民の生存権を保障するのが社会保障の概念です。

社会保障には「セーフティネット」としての役割、そして「所得再分配」、「リスク分散」、「社会の安定及び経済の安定・成長の確保」という機能があります。

社会保障を担う制度は所得保障(年金制度や生活保護)、医療保障(医療保険や公費負担医療)、社会福祉(高齢者、母子、児童、障がい者の福祉)、公衆衛生(感染症、環境汚染、労働衛生への対策)から構成され、これらが重層的に人々の生活を支えています。

ところが、年金、介護、医療といった社会保障は人口の影響を強く受けます。社会保障の様々なサービスは、人口高齢化によってますます大きなものになり、それだけ国民の負担も大きくなっていきます。

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医療保障

企画展「岩手の保健福祉 1960~70年代を中心に」展示風景

社会保障制度のもと、国民が傷病の際、必要な医療を効果的に受けられることが保障されています。これが医療保障です。

医療保障の仕組みは歴史や文化に影響され、国ごとに異なります。行政サービスとしての医療を税収で賄う国々、公的医療保険を中心とする国々、民間医療保険が主体となっている国々と、大きく3つのタイプに分けられます。日本では公的医療保険が中心で、保険組合を作ってその加入者(被保険者)が保険料を出し合い、もしもの時の医療費を助け合います。現在国民医療費の財源は、およそ保険料が5割、公費4割、患者負担1割という割合です。日本では居住地や職種によって加入する保険が決まっています。

医療保険制度は、被用者保険(職域保険)と国民健康保険(地域保険)に大別されます。企業などの被雇用者が事業所単位で加入するのが前者で、後者はこの適用を受けない者が居住地ごとに加入するものです。現在は75歳以上(65歳以上の一定障がい者を含む)の高齢者に関わる医療を独立させた後期高齢者医療制度も創設されています。

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国民皆保険

現在全ての国民は、何らかの医療保険に加入しています(国民皆保険)。昭和30年(1955)頃までは、農業や自営業者などを中心に、およそ3割の国民が無保険者でした。日本では昭和33年(1958)に新国民健康保険法が制定され、全市町村が同36年(1961)までに国民健康保険事業を開始。これにより、原則として全国民が平等に保険医療を受けられるようになりました。

被保険者は保険者に保険料を納めることで、傷病の際に保険医療機関を通して医療の給付を受け、残りの医療費を自己負担で支払うことになります。日本は先進国の中でも保健水準が高く、国民皆保険を実現していることで、比較的低い自己負担で医療サービスを受けられます。このことは日本人の平均寿命、乳児死亡率に関係してきます。

社会の高齢化や医療技術の進歩を受けて医療費は高額化しており、医療提供により医療機関に支払われた総額を示す国民医療費は、国民皆保険の達成から増加の一途をたどっています。

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高齢者保健

企画展「岩手の保健福祉 1960~70年代を中心に」展示風景

高齢者は日常的に自覚症状を訴えることが多く、受診率が高くなります。高齢者の疾病(しっぺい)は特に慢性的な経過をたどることが多く、入院医療費の割合が高くなります。高齢人口の増加と相まって、老人医療費は増大しています。

戦後、公衆衛生の向上などで高齢人口の割合が増加したことで国民の老後への関心が高まり、昭和38年(1963)老人福祉・老人保健を担う老人福祉法が制定されました。同48年(1973)老人医療が無料化されましたが、老人医療費が急増、国民健康保険制度の運営を著しく圧迫しました。同58年(1983)老人保健法が制定され、老人保健に関する制度が分離・強化されます。しかし公的介護サービス整備の必要性が浮上、従来の老人保健、老人福祉の2制度から介護と慢性期医療の独立再編が行われ、平成12年(2000)介護保険法が施行されました。さらに同20年(2008)、国民医療費の大幅な増加に伴い、高齢者医療確保法が旧老健法に代わって施行。75歳以上の高齢者の医療費を独立させて管理する後期高齢者医療制度が創設されました。

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母子保健

母子保健は「健康な次世代を育む」という、人類にとって重要な目的を持ち、母親を対象とした母性保健と、子どもを対象とした乳幼児保健が含まれます。母子相互作用の重要性から、妊娠・出産・育児期において母親と子どもへの一貫した対策が取られます。

昭和41年(1966)に施行された母子保健法は、母性・乳児・幼児の健康の保持と増進を目的とした法律です。日本の母子保健施策は、保健対策(保健指導、健康診査など)、医療対策(医療援護など)、母子保健の基盤整備の3つの柱で推進され、市町村が主体となり、妊産婦・新生児・乳幼児の健康診査や訪問指導を行います。現在は、母子医療対策や子育て支援対策、心身障がいの発生予防、慢性疾患を持つ子どもたちへの対応、地域での対策の充実などに重点が置かれつつあります。

母子保健の統計のひとつに「乳児死亡率」があります。これは生後1年未満の死亡数を出生数で割ったものを千倍したもので、母体の健康状態、養育条件などの影響を強く受けるため、「地域別比較のための健康状態、衛生水準を表す指標」のひとつとされます。

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地域保健

地域における保健活動において最も重要なのは、地域に生活する人々の実態を具体的に把握し、地域の特性を活かした保健と福祉のまちづくり、快適で安心できる生活環境の確保を実現することと言われます。

地域保健を支える社会資源には、都道府県・市区町村が設置する公的機関(保健所、市町村保健センター)や医療機関などの物的資源のほか、NPOや医療従事者、地域住民を含めた人的資源があります。地域保健においては、これらの社会資源を整備し、有効に活用することが求められます。

現在、地域保健における活動の基礎となっている地域保健法は、少子高齢化、疾病構造の変化、需要の多様化を背景とし、地域住民の立場を重視した地域保健を実現するため、平成6年(1994)旧保健所法を改正して制定されました。その基本指針は地域保健対策の総合的な推進や円滑な実施を目的として定められており、その内容は国民のニーズの変化、介護保険や健康増進法の策定、医療制度改革など、社会的背景に応じて改正が行われてきました。

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