更新日:平成28年2月5日/掲載日:平成27年11月8日
猫は渡来してきた動物といわれています。いつどこから渡来したのか、はっきりわかっていませんが、9世紀初頭の説話集『日本霊異記』に、猫が登場する説話がみられます。『宇多天皇御記』の寛平元年(889)には、天皇の飼う黒猫についての記述があり、奈良・平安時代には人間のそばにいたと考えられています。『源氏物語』からは宮廷内で愛玩されていたことがうかがえ、やがて庶民生活の中でも身近な存在となっていきました。江戸時代、養蚕の盛んな地域では鼠害対策に飼われ、養蚕書には「ねずみの対策として必ずよい猫を飼い」とあります。また金運招福の縁起物に、招き猫の置物が喜ばれました。
一方その眼光や習性の不可思議さから、魔性の動物と見られることもありました。江戸中期の図説百科事典『和漢三才図会』には「十有余年の老牝猫は妖(ばけ)て災いを為す」とあります。老いた猫は、言葉を話したり踊ったりする化け猫になり、また尻尾が二股の猫又(股)となって人間を襲うなど、妖怪扱いされ昔話や浮世絵などに描かれました。
さまざまな表情を持つ猫ですが、どれが本当の姿なのでしょう。本展では、気ままなのら猫から怨念の果てのばけ猫まで、古今の文学・絵画や民俗など、さまざまな分野に現れた猫を紹介します。お気に入りの一匹を見つけていただければ幸いです。